岡山県青年司法書士協議会のブログ

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パラダイムシフトコミュニケーション®️講座 第1回・第2回

(最初に小声で申し上げますが、5000字くらいあって長いのでよろしくお願いします)

5月11日、25日に行われた「集客力向上・業務処理を加速するための連続講座」の第1回・第2回に参加しました。

 この講座は、医療福祉や行政をご専門とされる佐藤和美先生を講師にお招きし、パラダイムシフトコミュニケーションという技法を体験するものです。

 といっても、まず「パラダイムシフトコミュニケーションって何?」というところからスタートするわけですが、ざっくり申し上げますと、「それまで当たり前だと思っていた考え方を変えて臨むコミュニケーション」とイメージしていただければ近いと思います。

第1回参加者と講師の佐藤和美先生

 私が参加した第1回・第2回においては、コミュニケーションの大きな柱である「聞く・伝える」のうち、「聞く」に焦点を絞った講義が行われました。

 表題として掲げられた「透明な聞き方」とはどんなものなのか。ただ黙って相手が話すのを聞いているだけだとしたら、相手に「話を聞いていない」と思われるだけなのでは?と、講義に入るまでは内容の想像が全くつきませんでした。

 

 まず驚いたのは、某保険会社の社員に対して、「相手の話を聞く時に自分がどのような態度をとるか」というアンケートが行われ、分類してみると72通り12パターンものスタイルがあったというお話でした。人の話を聞くときのスタイルがそんなに幾つもあるとは思いもしませんでした。また、「聞く」ことに焦点を当てた講義らしい「コミュニケーションは伝えることから始まるわけではない」という講師の佐藤先生の言葉が印象的でした。

 

 体験型の講義であるため、ほとんどの時間は講師から投げかけられた問いに対して答えたり、グループやペアになって、出された課題について話す+聞く、というスタイルで進行します。

 最初に、佐藤先生が「会社を辞めたいと思っている人」として受講生に相談を持ちかけるというデモンストレーションが行われました。ここでは、指名された受講生が返事をするのですが、「いつもの自分で応対する」という指示だったので、その通りに応対しました。その内容自体は特筆すべきことではなく、よくある会話の流れだと思ったのですが、一通りのデモンストレーションが終わった後、受講生の応対のパターンを分別してみると、同情や励まし、アドバイスなどに分類できることがわかりました。

 

 その後、今度は受講生がペアになって、同じく「会社を辞めたい人」として相談をする、というワークが行われ、それぞれが相談する側と聞く側を体験しました。そして、デモンストレーションの時と同じく、お互いの応対について分類・評価をします。ここで興味深いのは、自分が意図していたことと、相手の受け取り方が違っていた、というようなことが、ほんの3分ほどのワークの中でも起こるということでした。

 

 次に行われたデモンストレーションでは、1つのシチュエーションにおいて佐藤先生が12種類のパターンで応対するので、①次にまた同じ人に相談したいと思えるか ②自分のことをしっかりと扱ってもらえていると感じるかどうか という観点で観察することになりました。

 

 佐藤先生が提示してくださった12種類の応対は、誰でも日常的にしてしまっているものだったのですが、不思議なことに、それを抽象化して表現されると、そのどれもが「相談者を蔑ろにしている」ように感じられました。

 

 結果、「透明な聞き方」は12のいずれでもない、という結論になるのですが、これが講義の冒頭で示されていたとしても、私はすんなりと受け入れられなかったかもしれません。多少迂遠とも感じられるようなデモンストレーションとワークを経て、自分の中にそれが受け入れられる下地が出来上がったところでこの結論が示されたことで、素直に受け入れられたように思います。

 しかし、12のパターンを日常的にやってしまっている私は、どうすれば「透明な聞き方」をすることができるのでしょうか。

 

 そこで示されたのが「同意・同感・理解≠共感」でした。

 

 初めは「相手と同じように感じるのだから、同感≒共感では?」と反発したくなったのですが、「同意・同感・理解」とは「あなたの置かれている状況はわかりました。なぜなら私も同じような経験があるからです」と、相手が話をしているはずのステージにずかずかと入っていって、相手ではなく「私」が主役になってしまうことを指すのだと解説され、またも「同意・同感・理解≠共感」がスッと腑に落ちたのでした。

 

 それでは「共感」とはなんなのか。ここでいう「共感」とは、「あなた(=相手)」を主語としてみることだ、といいます。例えば相手が「今日は学校に行きたくない」と言っている子供だとしたら、「あなたは今日学校に行きたくないのね」と、まずその感情を受け止めることだそうです。(未熟者の私は瞬時に「何甘えてんだ学校へ行きなさい」と言ってしまうところです)

 

 まず相手の言葉をそのまま聞き、聞いたことによって湧きあがった感情(先の私の例でいえば「怒り」)は一旦脇に置いておき、相手の言葉を聞くことに集中します。この「ただ聞く」という行為が、相手の思考を先に進ませ、本当の自己決定を引き出すのだそうです。

 そうして聞き続けることで相手が次第に「本当に必要としている情報」を出してくれるようになり、そこから相手のニーズを探ることができれば、相手が本当に必要としているものが何かということが明確になります。その段階で相手に対して発するアドバイスは、すんなりと相手に受け入れられる状態になるということでした。

 

 ところが多くの場合、「何もしないこと=悪いこと」というような考え方になってしまいがちだと思います。ここで必要になってくるのがパラダイムシフト、すなわちこれまで当然だと思っていた考え方を変えることです。つまり「何もしないこと≠悪いこと」。ここでも佐藤先生の「同情は、相手と一緒に溺れているのと同じこと」という言葉が印象的でした。慣れるまでは時間がかかりそうですが、これが活かせる場面では思考のスイッチを切り替えてやってみようと思います。

 

 長くなりましたが、ここまでが前半の前半、第1回のレポートです。以下、第2回のレポートへと続きます。

 

第2回参加者と佐藤先生

 第2回は、第1回で行われたスキルを実践してみた、あるいは実践しようとしてできなかった場面を振り返り、実践した結果どうだったか、また実践できなかった場合にはなぜできなかったのかを共有するところから始まりました。

 その中で、受講生からは「話をしてくれる相手に対しては有効に作用したと思う」「話をするのが苦手な相手に対しては実践しづらく、結局沈黙を恐れて自分から色々と質問してしまった」というような事例が共有されました。対応する相手を選ぶスキルなのかもしれない、と私も思っていました。

 しかし佐藤先生は、「相手がたくさん話してくれた時の自分はどうだったか?」を考えてみましょう、とアドバイスをしてくださいました。

 つまり「話したい相手→黙って聞くことができる」「話したがらない相手→質問を投げなければならない」ではなく、「相手が話し出せるように自分が変化するべきだ」というのです。(これもパラダイムシフトということですね)

 

 ここで気をつけなければならないのは、相手が話し出せるように反応しようとするあまり、安易に同意・理解を示してしまってはいけないということです。話し手は、こちらが同意・理解を示すと、「自分は正しいのだ」という感情を持ち、訂正がきかなくなります。お互いに会話の方向性が同じである場合には問題ありませんが、こちらが一度逆の方向性を持つアドバイスをした場合に、話し手はそのアドバイスが受け入れられなくなるのです。

 

 そのようなことにならないためにはどうするか。

 

 佐藤先生は、①事実の明確化 ②感情の明確化 ③まとめ の3つのステップを用いて、絡まった感情を解きほぐすことができるといいます。

 例として、隣の席に苛立った男性が座ってきた場面を想定し、会話をしてみるというデモンストレーションが行われました。

 男性との会話の中で、事実のみを拾い上げ、感情や自分の評価を入れないように返答するのは、かなり大変でした。そもそも、なんと返事をすればいいのかわからないのです。苛立った初対面の相手に対して言葉をかけるシチュエーションがまずありません。しかし問題はそこではなかったのです。

 私はこのデモンストレーションを通して、相手と会話をするときに、いかに自分が相手の言葉から勝手に相手の事情を想像し評価していたか、ということに気づきました。勝手な想像と評価をもとに返事をするので、「事実のみを拾い上げる」という目標を達成することができないでいたのです。これは、自然にできるようになるにはトレーニングが必要だなと感じました。

 シンプルに事実と感情を切り分け、事実のみを拾い上げて相手に返す、というやり方で、相手に思考を促せば、相手自身が様々な思考を経て自分で答えを導き出すことができるのです。

 しかも、3つの要素を用いて相手の話を聞くということは、ただ黙って聞いているわけではないので、第1回の「ただ黙って聞く」よりも、さらに相手との会話が前進します。「人に話をすると思考が整理できる」という状態は、こういう時に起きるのだと思います。

 

 ただ頭の中でぐるぐると思考を巡らせていると、本当はなんでもないようなことが、とても困難で大仰なことのように思えてくることは、私にはよくあります。そんな時でも、話を整理して聞いてくれる人がいると、思考がホワイトボード上に書かれて整理されていくかのようにクリアになっていくことでしょう。ここで重要なのは、一人で考え込むのでなく、「人が聞いてくれる」というところです。無論、聞き手の方は「聞き手と話し手の境目がなくなるように聞く」ことを心がけ、聞き手の評価は入れずに、事実と感情を切り分けて返事をすることが大切です。

 

 講義の終盤には、「アップセット」の状態から、通常の状態へ戻る(講義の中では「アップセットからおりる」という表現がされていました)ことについてのお話がありました。

「アップセット」とは、逆上し、狼狽えて、ものごとがめちゃくちゃになり、適切に扱えない状態を指します。いわゆる「テンパる」状態に近いと思います。

 

 この状態になると、通常できていることができなくなり、無用なトラブルや失敗を招くことに繋がります。しかし、アップセットから「おりる」ことができれば、嵐が過ぎ去ったように頭の中がクリアになり、通常よりもハイパフォーマンスな動きをすることができる場合もあります。例えば寝坊して大慌てで目覚めた時、いつもより時間がないのに素晴らしい動きで寝坊のタイムロスをリカバリーし、時間に間に合わせたという経験がある方もおられるかもしれません。

 このように、アップセットが起きたとしても、そこから「おりる」ことができればいいだけなので、まずは「自分(または相手)がアップセットになっている」と認識し、そこから脱するための対策を持つことが大切なのだと佐藤先生はいいます。

 その対策とは、①自分がアップセットになるきっかけ(トリガー)を知っておく ②自分のルーティンを決めておく ③アップセットしていると気がついた時には「自分はアップセットしている」と宣言してみる だそうです。

 これらの対策により、ふと我に返ることができるようになれば、「アップセットしている自分」と「アップセットしていない自分」のうち、「アップセットしていない自分」の方が動き出そうとしている状態に近づくことができます。この「アップセットしていない自分」に意識を主導させることで精神が落ち着きを取り戻し、アップセットから「おりる」ことができるでしょう。

 次に、相手がアップセットしているな、と感じた時には、これまで述べた「透明な聞き方」のスキルを用いて相手の思考を明確化することで、相手をもアップセットから「おろす」ことができるかもしれません。

 

 ここまで、「透明な聞き方」と題して、「話し手がどんどん話をしてくれるような聞き方」の講義の報告をさせていただきました。

 

 まとめますと、

1 話を聞くときには主語は「あなた」 

2 同感・同情・理解≠共感

3 ①事実の明確化 ②感情の明確化 ③まとめ の3つの要素を用いて返事をする 

ということになります。

 

 私を含め、人から話を聞く時に「良い聞き手」でありたいと思う人にとって、とても学びの多い講義だったと思います。後半の「伝え方」も、どんな講義になるのか、どんな変化がもたらされるのか、興味深いです。

 

(月報にも今回の研修の受講レポートを投稿していますが、これの半分くらいの分量ですので、はぁ?5000字?と、読む気が起きなかった方は是非そちらを。。。)

(大木)